大学入試の前期試験が終わり、来週には高校入試が控えています。三月は続々と合格報告が舞い込んでくる嬉しい時期である一方、それまでは随分とヤキモキさせられる日々でもあります。
「おまえなんかが国立大に受かるはずがないと思ってた」とは、当塾の生徒が親御さんから言われた言葉です。そして生徒自身も、全く同じことを思っていました。おそらく、学校の先生も同意見だったに違いありません。なぜならば、国立大の合格判定がずっとE判定だったからです。
しかし、それでも彼ならば可能性があると確信していました。彼が持っていた将来のビジョンが明確であり、推薦入試であれば十分に戦えると思ったからです。
推薦入試で課せられる学力試験に特化した対策を取り、手取り足取り入念に書類・面接の準備をした結果、見事に生徒は秋田大学に合格を果たしました。周囲は驚いていましたが、彼の能力と準備してきた時間を考えれば、むしろ当然の合格です。胸を張って大学に進学してほしいと思います。
昨今、大学入試は複雑になるばかりです。入試方式や学部は細分化されてしまい、しかもそれぞれによって求められる能力が異なります。
一方、生徒もまた有する能力は様々です。だから、試験で求められる能力と生徒が有する能力がうまくかみ合えば、たとえE判定でも合格は夢ではありません。
昨年度、上智大学の共通テスト併用入試の判定が芳しくなかった生徒もまた、見事に逆転合格を勝ち取った一人でした。共通テストの結果がE判定だったとしても、二次試験は得意の数学のみで配点が高かったため、 十分に逆転できると判断した結果です。見かけの判定に惑わされることなく、合格可能性を見極めることが大切だと再認識させられた嬉しい出来事でもありました。
高校入試もまた、こうした戦略が重要になります。あまり大きな声では言えませんが、生徒の成績と志望校次第では、私は特定科目の勉強を控えるよう指示することがあります。限られた時間を有効活用するため、力を入れる教科・単元を絞り、効率よく成績を上げるためです。特に、E判定からの合格を目指すなら正攻法では難しいこともあり、時には大胆な戦略が必要になるわけです。
入試方式だけでなく、学部も細分化されたと先述しました。その結果、いったい何を学ぶ学部なのかが分かりにくくなっています。
たとえば、東京理科大学では工学部・理学部・先進工学部・創域理工学部と細分化されていますが、これらの名称を見て何を学ぶのかピンとくるでしょうか。そしてそれは生徒たちにとっても同じであり、自分の希望・特性にあった大学を選ぶのは容易ではありません。
「先生に先進工学部を教えていただいたおかげで合格できました!」とは、今年、東京理科大の合格を勝ち取った生徒の言葉です。当初、理科大を受ける予定はありませんでしたが、この生徒ならば関心を持つだろうと思い紹介したところ、方針を転換し受験することにしたのでした。壊滅的だった数学の成績を伸ばし、理科大の試験では八割程度の点数を取るまでに成長できたのは努力の賜物であり、本当に素晴らしいことです。
一方、高校入試はこれからが本番です。3月5日には高校入試が実施され、14日には合格発表が待ち構えています。当分、まだまだヤキモキする日々は続きそうです。